構文の解析

このサイトでは、ラテン語の「ガリア戦記」(DE BELLO GALLICO)を、詳細に解析することを目的としています。 解析するというのは、 何が主語で(多くの場合省略されている)、 どれが主たる動詞なのか判別し、他の節(副詞節、名詞節など)や句などと、どういう関係になっているか調べることです。私のような初心者の場合、ラテン語文の語の並び方は 非常に解りにくく、語順を(私の場合)英語風に並べ替えます。

例で説明します。

例えば次の文。これはガリア戦記の第一巻、第一章の始まりの文の一部です。これは、構造的には殆ど、英語と同じで違和感はありません。一語一語、訳していけば自然に意味は分かります。 大まかには [ Whole Gallia is divided in three parts] です。あまり、違和感はありません。これは、文が短く語の並びも英語とほぼ同じだからだと考えています。

残念ながら、こういう文はあまり一般的ではないようで、次のような文が多くみられます。

Cicerō,

quī

omnēs

superiōres

diēs

praeceptīspraeceptum praecepti N (2nd) N
:teaching, lesson, precept; order, command;
 (X 複数 奪格)
Caesaris cum summā

dīligentīadiligentia diligentiae N (1st) F
:diligence/ care/ attentiveness; economy/ frugality/ thrift; industry; love (Souter);
(c 単数 奪格)
mīlitēs

in castrīs

continuissetcontineo continere, continui, contentus V (2nd) TRANS
:secure, maintain, sustain; fasten/ hold in position; retain, keep safe, preserve;
(3人称 単数 過去完了 能動態 接続法 )
ac

cālōnemcalo calonis N (3rd) M
:camp /soldier's servant; type of awkwardness/ stupidity; low servant /drudge (L+S);
(c 単数 対格)

quidem quemquam extrā

mūnītiōnem

ēgredīegredior egredi, egressus sum V (3rd) DEP
:go/march/come out; set sail; land, disembark; surpass, go beyond;
( 現在 受動態 不定詞 )
passuspatior pati, passus sum V (3rd) DEP
:suffer; allow; undergo, endure; permit;
(完了 分詞 受動態 m 単数 主格)
esset,sum esse, fui, futurus V
:be;
(3人称 単数 未完了 能動態 接続法 )
septimoseptimus
序数 7
(n 単数 奪格)
diēdies diei N (5th) C
:day; daylight; (sunlit hours); (24 hours from midnight); open sky; weather;
(c 単数 奪格)
diffīdēnsdiffido diffidere, diffisus sum V (3rd) SEMIDEP
:distrust; despair; (w/DAT) lack confidence (in), despair (of); expect not;
(現在 分詞 能動態 単数 主格)


numerō

diērum

Caesarem fidemfides fidei N (5th) F
:faith, loyalty; honesty; credit; confidence, trust, belief; good faith;
(c 単数 対格)
servātūrum,servo servare, servavi, servatus V (1st)
:watch over; protect, store, keep, guard, preserve, save;
esse省略の未来不定詞
quod longius prōgressum

audiēbat,audio audire, audivi, auditus V (4th)
:hear, listen, accept, agree with; obey; harken, pay attention; be able to hear;
(3人称 単数 未完了 能動態 直説法 )
neque ūllaullus ulla, ullum (gen -ius) ADJ
:any;
(f 単数 主格)


reditūreditus reditus N (4th) M
:return, returning; revenue, income, proceeds; produce (Plater);
(X 単数 奪格)
ēius

fāmafama famae N (1st) F
:rumor; reputation; tradition; fame, public opinion, ill repute; report, news;
(c 単数 主格)
adferēbatur,adfero adferre, adtuli, adlatus V TRANS
:bring to, carry, convey; report, bring word, allege, announce; produce, cause;
(3人称 単数 未完了 受動態 直説法 )
simul eōrum

permōtuspermoveo permovere, permovi, permotus V (2nd)
:stir up; move deeply; influence; agitate;
(完了 分詞 受動態 m 単数 主格)
vōcibus,

quī

illīus

patientiampatientia patientiae N (1st) F
:endurance/hardiness; patience/persistence; apathy; sufferance; hardship;
(c 単数 対格)
paene obsessiōnemobsessio obsessionis N (3rd) F
:blockade, siege; obsession (Cal);
(c 単数 対格)
appellābant,

sīquidemsiquidem CONJ
:accordingly; if indeed/in fact/it is possible, even supposing; since/in that;

ex castrīs

ēgredi

nōn

licēret,


nūllum

ēiusmodīejusmodi ADV
:of this sort; of such kind;

cāsumcasus casus N (4th) M
:fall, overthrow; chance/fortune; accident, emergency, calamity, plight; fate;
(c 単数 対格)
exspectāns,exspecto exspectare, exspectavi, exspectatus V (1st)
:lookout for, await; expect, anticipate, hope for;
(現在 分詞 能動態 単数 主格)
quō

novem oppositīsoppono opponere, opposui, oppositus V (3rd)
:oppose; place opposite;
 (完了 分詞 受動態 複数 奪格)
legiōnibus

maximōquemaximus maxima, maximum ADJ 最上級
:greatest/biggest/largest; longest; oldest; highest, utmost; leading, chief;
(m 単数 奪格)
equitātūequitatus equitatus N (4th) M
:cavalry, horse-soldiers; equestrian order; bodies of cavalry (pl.);
(X 単数 奪格)
dispersīsdispergo dispergere, dispersi, dispersus V (3rd)
:scatter (about), disperse;
 (完了 分詞 受動態 複数 奪格)
ac paene dēlētīsdeleo delere, delevi, deletus V (2nd) TRANS
:erase, wipe/scratch/remove (letters/marks), wipe/blot out, expunge, delete;
 (完了 分詞 受動態 複数 奪格)
hostibus in mīlibus

passuum tribustres -es -ia, tertius -a -um, terni -ae -a, ter NUM 3
:three;
(X 複数 奪格)
offendīoffendo offendere, offendi, offensus V (3rd)
:offend, give offense (to); displease/annoy/vex; trouble/upset, hurt (feelings);
( 現在 受動態 不定詞 )
posset, quinque cohortes frūmentātumfrumentor frumentari, frumentatus sum V (1st) DEP
:get grain, forage;
(完了 分詞 受動態 m 単数 対格),
目的分詞
in proximās

segetēsseges segetis N (3rd) F
:grain field; crop;
(c 複数 対格)
mittit, quāsqui quae, quod PRON
:which?, what?; what kind of?;
(f 複数 対格)
inter et castracastrum castri N (2nd) N
:fort/fortress; camp (pl.), military camp/field; army; war service; day's march;
 (n 複数 対格)
ūnus

omnīno

collis intererat.

この文(文章ではなく、一つの文です!)の主語はCiceroです。その動詞は最下段か下から2行目あたりにあるmittit(送った)であり、目的語は quinque cohortes (5つの大隊)です。 つまり「キケロは5大隊を送った」というS+ V+ Oの形式です。 このような文を、頭から読み下して意味が理解できるようになるまでは、構造を調べて解析することで理解するしか方法がないと思われます。

簡潔で明瞭であるという評判の高いカエサルでも、この程度の長さの文はたくさんある ということは、他の人の文章は考えるだに、恐ろしい。それともローマ人はこういう文でも、スラスラと特に問題なく理解していたのでしょうか?

お急ぎでない方には、以下にこの文の構造を解説したものを下に置きます。

 解説、(クリックで開きます)

これは実は第六巻の36章の一行目です。こういう形式の文を「掉尾文」というらしく、ラテン人の好んだ様式との事。とにかく末尾に来るまで主な動詞を書かず、宙ぶらりんにすることで緊張を持続させるテクニックである由。

構造は次の通り

Cicero,

        qui ~ continuisset,

        ac ~ pasus esset,

septimo die, diffidens ~

                           quod ~ audiebat

                           neque ~ afferebatur,

                   simul permotus eorum vocibus qui ~ appellantur

                            (siquidem ~ liceret)

                   expectans nullam casum quo ~ posset

mittit quinque cohortes.


Cicero septimo die mittit quinque cohortes frumentatum in proximas segetes. frumentatumはfrumentorの目的分詞「飼料のために」「Ciceroは7日目に、飼料を得ようと、近くの畑に5大隊送った。」これだけが文の骨子である。

qui continuisset milites in castris cum summa diligentia omnes superiores dies praeceptis Caesaris. Ciceroを修飾している文の①「彼はそれまでの期間では、Caesarの命令に従い、野営地内の兵士たちを最高に精勤の状態で保ち」continuissetが接続法で「譲歩の接続法」と呼ばれる。

ac esset passus ne quidem quamque calonem egredi extra munitionem.Ciceroの記述② 「一人たりとも従軍奴隷たちを砦の外に出すことを禁止した」(やはり譲歩の接続法)

この譲歩の接続法はCiceroがそれまで優秀であったの「だけれども」と、後に「でもこんな失策があった」という記述の伏線とも言うべきニュアンスであろう。

septimo die diffidens : septio dieは時の奪格。「7日めに」diffidensは現在分詞で、文法的には主語のCiceroを修飾している、分詞構文。Caesar servaturum (esse) fidem de numero dierum.  diffidensの「信頼せず」の中身。「Caesarが日数に関する約束を守ること」quodで疑っていいた理由を2つばかりあげている。

simul permotus eorum vocibus :これもpermotus完了分詞で、分詞構文。「同時に、彼らの声に影響されて」彼らとは次のqui関係代名詞で説明される。

qui appellabant illus patientiam paene obsessionem.「この耐久をほとんど籠城と呼んでいた」述語対格。

siquidem non liceret egredi ex catris. 「と言うのは実に砦の外に行くことが禁じられていたからである。」

expectans nullam casum eiusmodi quo posset offendi. 「また(Ciceroは)何か攻撃される類の事故を想定していなかった。」

novem legionibus oppositis  : 独立奪格「9軍団が配置されており」

maximo equitatu dispersis : 独立奪格 「最高の騎兵たちがそのあたりに散らばっており」

hostibus pane deletis : 独立奪格「ほとんど崩壊した敵」

inter quas et castra unus collis omnino intererat.

これが、文の構造を解析する、という意味です。

スクリーンショット

以下に、有用と思われる情報を付加していきますが、とりあえず、能書きはいいから、という方は次のところからインデックスページへどうぞ。
(2017年1月時点で第1巻から第6巻まで、載せてあります。)

インデックスページへ
閲覧/編集

閲覧するにはインデックスのページから行きます。インデックスページには第一巻から第七巻までに含まれている章が羅列されています。 基本的にはその [Chapter X] という項目を、左クリックすることで、それに対応する章の内容が表示されます。 項目を右クリックすると、「別窓で表示」と というメニューが出ます。。

スクリーンショット

各章のページは右の図のように見えます。(クリックして拡大縮小)これらのページは、編集可能です。即ち、いま書かれている内容を変更する事ができます。 但し変更後、サイト側の元のデータを上書きすることは、(現時点では) できません。可能なのは、ページの右上にある「保存」ボタンを押して、変更したページをご自分のPCにダウンロードすることです。 一度、自分のPCにダウンロードすると、そのファイルは一般のhtmlのフォーマットです。つまり、普通のブラウザで、読むことができます。タブレットでも、多分スマホでも読めます。(マイクロソフトの新しいブラウザ である[Edge]はもしかするとローカルファイルを読み込めないかもしれません。そのときはChromeなどを使ってください。)

一度、自分のPCに保存したファイルはそのままでは再度、編集することはできません。もし再度編集する場合は、左の欄の[ダウンロードなどへ]のページに行き、「編集のためのアップロード」と書かれた場所をクリックして、 そのファイルを持っていって 落としてください。アップロードして、再度編集可能な形で表示します。その後は、また同じく保存できます。

ラテン語の欄の青字の上にカーソルを持っていくと、(入力してある)訳語が出ます。ラテン語の単語をクリックすると、「小窓」が現れて、そこに好きな内容を書き込めます。 書き込んで「save]ボタンを押すと「小窓」は閉じます。Xマークで閉じると内容の変更はありません。

注釈欄、及び翻訳欄も同様に編集できます。編集したい欄で左のダブルクリックで、編集モードに変わります。編集モードは背景の色がピンクががったもの変わることとB,U,S,I などの小さなボタンが あるコマンド欄が追加されるので、明確に解ります。ボタンは夫々、Bold, Underline, Strikeout, Italicの略です。対象となる文の部分を選択して、押してください。Fontサイズや文字の色もある程度編集できます。 最後にコマンド欄の右上の「終了」 ボタンを押せば変更されて元のモードに戻ります。変更を反映しない、終了はできません。 更に編集可能な欄は、一度に一つです。2箇所、同時の編集モードにすることはできませんのでご注意ください。

編集したファイルが数個のときには、上に書いたような方法で可能ですが、全部の章を、ローカルの環境で編集作業を行いたい場合には不便です。 その場合には一番簡単なのは、辞書のところで紹介しますが[Vector]というソフト配布のサイトが ありますので、そこから一式をダウンロードすることです。

テキストについて

ラテン語のテキストは [The Latin Library] というサイトからダウンロードしたものをベースにしています。

The Latin Library

このダウンロードしたテキストを、行に区切りながらhtmlの形式に直し、更に順に「長音記号」を手で入力しました。 「長音記号」は、幾つかの「ガリア戦記」解説書を見ながら修正したものです。 主として[Francis Kelsey] という人の解説本と [Tappan Walker]という人の本を参考にしました。以下にURLを示します。

Kelsey本
Walker本

手で入力しているので 一部、ミスがある可能性は大きいとは思います。ぜひ、発見、ご指摘いただけると有り難いです。またこれらの本は解説本ですので、色々な注釈がついており、たいそう有益です。 長音記号つきでhtml形式のものは左のメニューの[ダウンロードなどへ]のページからダンロードできます。また、ダウンロードしたテキストを編集するアプリについてもダウンロードのところで記述します。

文法書、辞書について

文法書も、辞書もインターネットで、入手できます。古い本が多いので、著作権などは心配する必要は無いだろうと考えています。本文の中で、構文解析をするときに、その根拠を示す意味で 文法書を参照しています。 例えば [NewLatin 229] [AG429 b]とかです。これはNewLatinの方は [Chaeles Bennett]という人の [A New Latin Grammar] という本の§229を見よ、と言う意味です。 [AGxxx] の方は[Allen and Grennoughs]という人たちの同じ題名ですが[A New Latin Grammar]という本です。

Bennettさんの文法書は、幸い日本語訳が、インターネット上に出ています。この日本語訳の bennett本が一番多く参照させて貰いました。もちろん、内容は英語の原版と同じなので、§番号も同じです。 あとはこれも日本語ですが「ゼロからのラテン語」という[大黒学]さんという人の著作で、何かの翻訳では無いと思われます。 BennettとAGの文法書の構成は 大変似ており、その他、Hodgesという人の文法書も同じような構成で、ある意味ラテン語文法書は歴史に長いだけに、 その様式が定まっているのかなとも思っていたのですが、この「ゼロからの~」は、構成が独特です。しかし、構成は異なりますが、非常に系統だった説明で、 特に「数詞」「準動詞」の 説明はこれが一番わかり易かったように思います。

ゼロからのラテン語
新しいラテン語文法(日本語訳)
New Latin Grammar (Charles Bennett)
New Latin Grammar (AG)

辞書については、一番簡単なのは[Wikitionary]でしょう。これはラテン語だけではなく他の言語もでています。また、活用、とか屈折を気にせず、ただ出てきた単語を入れるだけで、 その、「辞書基本形」から 当該の数、性、格、時制など全て教えてくれます。オンラインでしか使えないのが、ちょっと面倒ですが。

Wikitionary

あとは、私の編集したラテン語辞書です。これの元データは、[Norre Dame]の[William Whitaker]という人が、オープンソースで 辞書のデータを公開してくれているものです。 ラテン語ー英語の意味が書いてあるデータ、ラテン語の語幹と語尾のテーブルなど、単語を分類して載せています。これらを使って、活用、屈折などを気にせず入力して、意味とか 活用などを表示するプログラムを作りました。 辞書だけのものはマイクロソフトの「ストア」に登録しておきました。(Windows 10用)[LatinDictionary]という名前で検索してください。 マイクロソフト、ストアはURLの表示ができません。

あとは辞書と、編集用アプリを一体化したものと「ガリア戦記」のテキストを全部まとめたものがVectorに登録しました。「ガリア戦記」という名前で登録しています。

Vector ガリア戦記

ダウンロードしたZIPファイルを解凍すると、テキスト、スクリプト、及び ローカル編集用のアプリが、一式揃います。そのまま、そのアプリを実行すると、このサイトのインデックスページと同じものがでて、ローカルに編集できます。 さらにこのアプリはラテン語辞書も組み込まれており、ラテン語の部分をクリックすると自動的にその語が辞書に渡されて、訳語が出ます。辞書の部分をダブルクリックすると、それがコメントとして文に挿入されます。 また、語の活用変化表一覧なども出せて便利です。これはアプリケーションを含むので、一般サイトからだと、ブラウザが拒否する可能性が高いのでVectorに上げていますが、実はテキストが全て長音記号つきでないなど、一部 古い内容もあるやもしれません。最新のテキスト、スクリプトなどは、ダウンロードページに入れておきますので、そちらから更新してもらえると良いかもしれません。もちろん、Vectorの方も最新に保つ努力はしますが…

コメント、要望など

説明に間違いがある可能性もありますし、テキストの長音記号の過ち、不一致などもあると思います。ご指摘頂けると幸いです。また異なる解釈など、歓迎です。下からお願いします。(現時点では、頂いたコメントなどは ここには表示されません。)

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